輿石氏や義弟の説明によると、自宅の母屋部分313平方メートルは輿石氏の名義で、75年の建築時に正規の手続きを経て宅地に転用。隣接する985平方メートルは農業従事者の義弟の名義で、このうち969平方メートルは農地のまま義弟が利用していた。だが、89年ごろ、義弟名義の土地は実質的に輿石氏に譲渡され、輿石氏は同年ごろから一部の畑を残して庭や車庫、石敷きの舗装路などを整備。輿石氏の自宅面積は計1298平方メートルまで拡大し、周囲を塀で囲った。
969平方メートルのうち779平方メートルは73年、農業振興地域整備法(農振法)に基づく農用地(農振農用地)の指定を受け、宅地転用は原則違法。同市農業委員会は昨年10月から3回にわたり、農地法と農振法に基づき、義弟に969平方メートルすべてを農地に戻すよう指導した。義弟は農振農用地ではない190平方メートルは転用許可を得て宅地に変更したが、779平方メートルについては違法状態のままだ。
農水省によると、農地の違反転用は08年に全国で8197件に上り、東京ドーム121個分に当たる566ヘクタールの農地が1年でなくなった。00年には水田を駐車場に転用した徳島県内の町議が略式起訴される事態も起きている。
国は「自給率向上のため農地減少を食い止める必要がある」として、昨年農地法を改正。宅地開発業者など法人による違反転用の罰金を最高300万円から1億円に引き上げ、知事らの原状回復命令に従わない個人への罰金を30万円から300万円に引き上げるなどの規制強化を図った。
東京農工大の梶井功名誉教授(農政学)は「自給率低迷の中、農業振興地域をどう有効活用するかは重要な政策課題。違反転用は農家から見れば『冗談では済まない話』だ。国会議員が率先して規制を無視するようでは示しがつかない」と話している。
◇ことば・農地法と農業振興地域整備法
農地法は農地の所有、貸借、転用などについて定め、それぞれの際に農業委員会か知事の許可が必要と規定。違反者個人には農相か知事が是正命令を出し、従わない場合には3年以下の懲役または300万円以下の罰金。農業振興地域整備法は優良農地の確保などを目的とし、都道府県が指定する農業振興地域の中から市町村が農振農用地を選ぶ。農振農用地になると農地以外の利用は原則不可。是正勧告や調停に従わない場合、違反者は1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられる。
【関連ニュース】
厚労省:「漢方」「はり」治療データ蓄積、人材育成を提言
食料自給率:50%に引き上げ 農水省計画
もちうま「ご飯うどん」デビュー 自給率アップの救世主に?
日本の酪農がピンチ/2 えさ代が高くなり、酪農家を苦しめている
未来みつめて:宇宙と南極から 野口聡一さん/工藤栄さん 極限環境の「食」
・ 長谷川等伯展 入場者10万人を突破…東京国立博物館(毎日新聞)
・ 佐賀大 ラグビー部1年男子、一気飲み死亡 「強要ない」(毎日新聞)
・ <長谷川等伯展>1万3553人が訪れ、長蛇の列 東京(毎日新聞)
・ 「北陸」と「能登」にお別れ、「撮り鉄」集合(読売新聞)
・ <鶴岡八幡宮>大銀杏を植え直し 幹を切断、根の再生に期待(毎日新聞)